あらすじ
戦時中のドイツでの実験、フルトヴェングラーが指揮する第九、そして巻貝の毒。時間 を超えて絡み合った 3 つの要素で一組の夫婦の運命を描く SF ラブストーリー。
北海道沖太平洋で異様なキノコ雲が目撃された。政府発表は「隕石の落下」。その後、その海域で採れたツブ貝を食べた人たちの入水自殺事件が続発。自殺者の増加に比例してツブ貝を買い求める人たちも増え続けていった。
オリンピックを前に不穏な事件に蓋を したい政府は情報を隠蔽し、海洋生物学者の洲谷麗美に極秘に実態を調査させていた。 麗美は、ツブ貝を食べた人たちが「かつて愛した人たちの幻覚」に海へと誘導されていたことを突き止める。それは幻覚というにはあまりに生々しく、脳が幻覚と実体を区別できないほどだった。麗美はそれらの幻覚を、チベットの言葉で「実体化した思念」を意味する「トゥルパ」と呼称し、研究に乗り出していた。その調査の過程で、麗美はトゥルパに異常にのめり込む来栖慶一郎という男に出会う。彼はトゥルパに意思を支配されることなく、自らの意思で亡き妻、晴海の姿をしたトゥルパとコミュニケーションをとっていた。
調べていくと来栖と亡き妻との思い出の曲、フルトヴェングラー指揮のベートーベン交響曲第9番が深く関わっていたことが判明。さらに、終戦直前のベルリンで行われていた極秘実験が関係していたらしいことがわかってくる。
上映情報
CAST
監督・脚本
この物語のキーポイントは「時間」です。
時間の流れに人間はどうしても縛られます。ですが、主人公の妻で亡くなった晴海が現れる時は必ず時間の逆流現象が起こるんです。
そこで表したかったのは、時間の流れは意味をなさず、過去も未来も一緒だということでした。
この映画のラストシーンは、 過去に戻ったというか、初めからそこの時間でもあったし、これからもずっとそこの時間にいるし、何があろうともあの二人は一緒にいるんだよ、ということを表現したかった。
人間はこの世界にいる限り時間の流れに縛られて、老いていずれ死んでゆくけれど、
でも愛っていうのは時間なんか超越して常にそこにあり、永遠にあり続けるものだということを描きたかったんです。
コメント
MATSUMOさん
(アニメ監督「ぼくらの自由研究」)
ツブ貝が物語のキーになったSF的映画なのですが、妙なリアリティーが焼き付いていて、色んなオマージュ要素が詰まっており…スゴくツボでした。もっと広まって欲しい。ツブ貝のアブラを求めずには居られないほどの、深い恋愛をしてみたいなとも思いました(笑。
下向拓生さん
(映画監督「センターライン」)
難解な映画かと思いきや、”ニセモノでもいいから愛する人ともう一度会いたい”という俺の大好物な題材で大満足!SFファンにはニヤリとする小ネタも笑
ノラネコさん
(映画ブロガー「ノラネコの呑んで観るシネマ」)
海は命が帰り、生まれるところ。浜辺は現世と常世が、渾然一体に混じり合うところ。よくできた推理小説のように、ミステリアスに展開する物語は、いつしか生と死、永遠と一瞬、記憶と実存の曖昧な境界へと踏み込んでゆく。ハードSFに行ってもおかしくない設定ながら、二つの世界を結びつけるのが“愛”という、もっとも強くウェットな感情なのが面白い。SF的設定から詩的な心理ドラマへと持ってゆくあたり、センス・オブ・ワンダーを感じさせる力作。
東海林毅さん
(映画監督・偏愛ビジュアリスト「老ナルキソス」)
面白かった!突然変異したツブ貝の貝毒をめぐるユニークなSFファンタジー。 小さな巻貝たちの人智を超えた大きな意思の存在が垣間見えるのが恐ろしくて美しい。 そして巻貝はチョットかわいい。
Staff
受賞歴