【対談】齋藤新 × 横内究 vol.2 飲食店BGMとゲーム音楽風ミラクルナンバーナイン


演歌がBGMとして使用されている飲食店シーン。文字通りの“ど演歌”に注目。

劇中の飲食店のBGM 〜ジャズと演歌と〜

齋藤 当初、この映画はベートーベンの第九を使うという前提で、劇伴は使わないつもりだったのですが、映画を作っていくうちにやっぱり劇伴がほしくなってきまして・・・
もう一度あの男を召喚するか・・・と横内さんに追加の作曲をお願いしました(笑)
また、映画のバックにかかる音楽だけではなく、居酒屋でかかっている曲なんかも頼みました。演歌、ゲームミュージック、ロック、ジャズ、それから現代音楽と、色々なジャンルの曲を作っていただきましたが、こんなに色々なジャンルの音楽を一度に作ることってあんまりないと思いますが・・・

横内 無いですね。まあ、ジャズにしても演歌にしても自分でやっていたらまず手を出さないジャンルなので・・・面白かったですよ。

齋藤 横内さん、わりと自作品の音楽ではジャズっぽいのを書いていた気もするんで、ジャズは好きなのかなとも思ってたんですが。

横内 いえ、全然。店の中のBGMとして使うというので、なんとなく作っちゃいましたけど、ジャズってちゃんと勉強しなきゃいけない音楽じゃないですか。しっかり、やってる人たちが沢山いるジャンルなので。ジャズ書きましたっていって持って行っても、こんなのジャズじゃねーよって言われちゃうんで。BGMって前提だから、そこを一生懸命聞いてる人はいないだろうってことで作れました。演歌は楽しかったですね。

齋藤 演歌はびっくりしましたね。聞いたとき笑っちゃいましたもん。すげー、ど演歌だって。

横内 よく浮かぶもんだな、こんなに色々っていう(笑)。あれ演歌の曲の間奏部分っていう注文だったじゃないですか。間奏部分なんだけど長いんですよね。45秒から50秒くらい。演歌の間奏でその尺って・・・どうなんだろう。なくはないかもしれないけど。自分の中にある演歌っぽいフレーズを総動員して、あの間奏をつくりました。

齋藤 よかったですよ。荒れる北海道の海が目に浮かぶようでしたよ。

横内 日本海ですね。

齋藤 この演歌の曲はですね、劇中の寿司屋のシーンでバックにうっすらかかっています。なんとなくこの映画、いろんなジャンルの音楽をぶつけていこうという思いが、後付けなんですけど、あったんです。演歌のかかるシーンの直後のシーンで来栖が家の中でクラシックを聴いているんです。演歌からのクラシックってなんか面白いんじゃないかなって思ったりとか。割と自分の映画の中でも音楽がずっと鳴ってる作品になりました。その分横内さんが大変だったってことですけど。

横内 面白かったですよ。

ゲームミュージック風アレンジのミラクルナンバーナイン

齋藤 あのゲームミュージック風の、ユーチューバー的場面にかかる曲も最高でしたね。

横内 ファミコンぽいっていうオーダーだったので。

齋藤 昔のファミコンっぽい音、PSG音源でしたっけ、いわゆるピコピコ音。あの時代のゲーム機ってドラムの音とか持ってないので、ノイズ音を使ってザッザッザッてパーカッションぽく使ってたりしてました。そんなしょぼい音源でのミラクルナンバーナインをかけたいなと思っていたら、完璧なゲーム音っぽい曲を作ってくれました。


魚屋アイドルるる子の「おいSEAパラダイス」の一場面。バックにかかるのは劇中歌「ミラクルナンバーナイン」のゲームミュージック風アレンジ。効果音にも工夫が。

横内 齋藤監督からのオーダーにPSG音源と明記されていたと思うんですけど、自分の曲作りに使っているシンセの中を調べたら、PSG音源っていうのはなかったんですよ。

齋藤 ないでしょうね。今どき。

横内 いやいや、ああいう音ってチップチューンっていって割と人気のジャンルですよ。

齋藤 へぇ。

横内 音としてシンセに入っていても不思議じゃないんですが、その代わりに入っていた音がSID音源っていうまた別の、レトロなゲームマシンの音でして。あんまり日本では人気なかったんですが、コモドール64とかコモドール128とか、あちらの・・・アメリカだったかな、コモドール社ってところが作った、日本でいうところのMSXとかあの辺の立ち位置になるんじゃないかなって思うんですけど。そういうのに搭載されていたSID音源というのがありまして、まあPSGと似たようなもんなんですよ。このSID音源の音を、PSG音源の決まりにのっとって鳴らしました。

齋藤 決まりと言うと・・・

横内 基本的に和音は鳴らないとか、和音を出すのなら同じ楽器を複数立ち上げて、それぞれに別の音階を鳴らすとか、同時に出せる音の制限とか、さっきもありましたがドラムの音はノイズ、ザーーッていう音を短く鳴らすとザッ!ってなって、そこにフィルターをかけるとトン!とかドン!とかなるんですけど、それも結局一つの音なので、ドンタンドトタンとかそういう音はできないんですね。それをやっちゃうと普通の楽器の音が鳴らないっていう。そういうところも踏まえて、るる子の「おいSEAパラダイス」のところは、昔のゲーム風にしっかり作ってあります。

齋藤 すごいですね。それにしても、昔のゲームの音楽ってすごい制約の中で作ってたんですね。私、けっこうゲームっ子だったのでナムコとかセガとか。実は僕はファミコンは持ってなかったんで。

横内 そうですか。

齋藤 そうです。ドラクエっぽい音とか言っておきながらドラクエやったことないんですよ。ずっとセガだったんでPSG音源はセガが使ってた音で、もしかするとファミコンは違うのかも。

横内 ファミコンもPSGの派生の音源らしいですね。

齋藤 そうですか。それにしても、80年代に戻ったような、いい音が聞けたなって思いました。


 

vol.1「挿入歌ミラクルナンバーナイン
vol.2「飲食店BGMとゲーム音楽風ミラクルナンバーナイン」
vol.3「劇伴音楽について
vol.4映画サントラマニア同士のディープな領域
vol.5話はさらに映画音楽の深淵へ

 

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